あるところにフーポーという鳥がいました。
 ある日フーポーは、全世界の鳥たちに向かって、これから会議を行うので集まるようにと呼びかけました。全世界の鳥たちが集まって、フーポーの話を熱心に聴きました。「私たち鳥には、サイムルグという名前の神様がいる。サイムルグは幻の国の宮殿の中で生活している。これからサイムルグに会いに行こう」

 しかし、遠く離れているサイムルグの宮殿に行くには、長く危険な厳しい旅になることは目に見えており、命の危険も覚悟せねばなりません。そこでフーポーは、「サイムルグに一回でも会えば、私たちは覚醒し、本当の生きる目的を見つけ、幸福になれる」と語りかけました。鳥たちは顔を見合わせ、相談しあいました。神様には会いたいけれど、危険な旅であり、躊躇しているのです。するとフーポーは、「行きたくないのなら、行かなくていい。しかし行きたくない理由をみんなの前で言いなさい」といいました。

 鳥の中で美しい声を出し、人間を喜ばすことで有名なナイチン・ゲール(ウグイス)は、「私は本当に行きたいのです。だけれども、長い旅の中で声がかれてしまうと人間を喜ばすことができません。私の使命を果たせなくたってしまうのです。」と言いました。それに対してフーポーは、「ああそうか。それならやめて結構だ。」と答えました。他の鳥たちも次々と前に出てきて、行きたくない、いや行けないと、理由を説明し始めました。結局、集まった鳥たちの中で、行くことを決意したのは数百羽にすぎませんでした。

 それから七年にわたる、彼らのつらく苦しい旅が始まりました。そのうちの三分の一の鳥たちは、その途中の危険な冒険の中で脱落していきました。サイムルグの宮殿にたどり着いたときには、もう37羽しか残っていませんでした。到着できた鳥たちも疲れ果て、羽根は落ち、ボロボロでした。

 限界の中でようやくたどり着いた鳥たちは、宮殿の責任者に案内されて、サイムルグの部屋に通されました。その部屋には大きなカーテンがあり、その向こうでサイムルグが待っていると言われました。37羽のの鳥たちは気を取り直して、期待に胸を膨らませました。

 長い間待たされました。どのくらいたったのでしょう。ようやく「今からサイムルグとの対面ができますよ。」と言われました。カーテンの幕がゆっくりと上がっていきます。

 しかし、そこには誰もいませんでした。

「どうなっているんだ!」「7年間ボロボロになるまで飛び続けて、危険な目にもあって、いろんなことを乗り越えてやってのことでここまで来たのに、誰もいないじゃないか!」鳥たちは騒然となりました。皆はフーポーに向かって言いました。「サイムルグはどこにいらっしゃるんですか!」

 それに対してフーポーは、静かな口調で「実は君たちに言わなければならないことがあるんだ。」と言いました。みんな、フーポーの次の言葉を待っています。フーポーは言いました。

「サイムルグとは37羽の鳥のことなんだよ。」
それを聞いた鳥たちは悟りを開いたのでした。

〜スーフィー教指導者 ファラド・ウディン・アタールによる寓話〜

私たち自身が神への長い道程の途上なのかも知れません。